好奇心ドリブンで何でも面白がってどんどん進めましょう。きっと10年後は新しい職業ばかりで全然予想できませんから
2021.08.17

デジタルハリウッド大学 准教授 星野裕之先生

 

概要
ぼくの知り合いで、とても段取りがよいCG映像作家がいるのですが、彼女はデジタルハリウッド大学の卒業生です。プロセス管理が上手で、たくさんのデジタル活用の引き出しを持っていたので、デジタルハリウッド大学の学びには専門的かつ実践的なイメージを持っていたのですが、今回の取材を通じて、相当に覆されました。学生たちが進むべき方向を見つけるために、さまざまな機会と勇気を提供する大学がデジタルハリウッドのようです。ロボティクスを中心に教えている星野 裕之准教授にいろいろとお話をお聞きしました。

 
 
 
 
 

これまでの経歴についてお聞かせください


星野先生 デジタルハリウッドの社会人向けスクールでCGを学んで卒業した後、たまたま科学技術振興事業団 ERATO 北野共生システムプロジェクトという求人票をみつけました。デジタルハリウッドの求人募集はゲームの会社を始め、カタカナや英語の会社が多いのです。それがある日突然、漢字だらけの求人募集が現れて、何だか面白そうだなと思って行ってみたら、国立研究開発法人 科学技術振興機構でロボットの研究だったんです。そして、アルバイトでこのプロジェクトに入ったのがキャリアの始まりです。

ロボットに興味を持ったきっかけは、何でしたか?


星野先生 僕たちの世代はガンダムやロボットがたくさんあった時代です。変わったプラモデルがたくさんあって、ロボットが身近な世代だったんですよね。ただ、ものを作るのは好きだったんですが、決してロボットがそこまで好きというわけでもなかったんです。今でも、ロボットが大好きというよりは、ロボットが社会に入っていく形ってどんなのだろうということを考える方が好きです。

現在の研究について、お聞かせいただけますでしょうか


星野先生 otuA(オチュア)という会社をやっておりまして、そこではテクノロジーを大事にされている企業のブランディング、ロボットのデザイン、テクノロジーを使ったプロダクトのデザインをしております。すごくチャレンジが多いものですから、グッドデザイン賞をとらせていただいたり、ベンチャーとしてこれから調達を受ける企業のブランド作りをしたり、最近では新しいソーラーパネルを使ったロボットをデザインして作りました。製品がより素敵になったり、より社会に広がっていくにはどうしたらいいのか、を企業と一緒に考えることを仕事にしています。

基礎研究というより、実業寄りのことをされていらっしゃるのでしょうか?


星野先生 そうですね。ただ面白いのが、デザインの最初を考えていくと基礎的なことを考えなければいけないことが多くて、文脈の根っこが何なのかということを考えることが多いです。

 

大学のオープンキャンパス向けにプロトタイピングしたロボットです。4足歩行ロボットでスイッチを入れると、うねうねと歩きます。これはロボット工学として構造に特に新規性があるわけではないんですが、蛇腹パイプの関節が有機的に動くのは、僕たちの世代にはアニメや漫画で馴染みのある姿ですね。ただ作って見て分かったのは、現実ではありそうで無かったデザインでした。

最近ソフトロボティクスというジャンルがロボットの中でも発達しています。今までは硬いロボットハンドだと卵などの壊れやすい物や柔らかい物を持てなかったのですが、柔らかいタコのような手だと持てるみたいなところから始まって、今では実用から研究まで様々な試みが進んでいます。今までは機械工学だけだったのですが、生物学などの観点からもロボットを作っていく。この構成部品たちがだんだんと本当に生き物になっていくように、ロボット自体が新たなジャンルへとシフトしようとしています。

 


そういうことを考えていると、「亀ってどうなっているんだっけ」とか「象ってどうやって歩いていたかな」「そもそも子どもと大人で大きさや比率や歩き方も結構違うけど、同じ種だな」ということを考えますし、それを僕たちが模倣していったときに自然環境の中でどういう形になっていくかを考えています。 

いま僕たちはまだ自分でデザインをせざるを得ないんですが、亀は誰かがデザインしてこういうふうになったわけではありません。自然環境からのフィードバックによって機械学習系を回していくと、これからはデザインせずとも自ずと形が決まっていくんだろうと思います。このあたりをテーマとして考えています。もともとの成り立ちから100年、200年ぐらい先の未来までをある程度見通しながら研究開発することを始めています。

今の研究をされていて、やりがいや面白さを感じるのはどういったときですか?


星野先生 2つあるのですが、先ほどのクライアントワークというか、社会にチャレンジしている企業のみなさんと一緒にチャレンジをして、社会に受け入れられたときは嬉しいですね。以前、亀型のロボットを作ってみたところ、それが「可愛い」とか「これを森の中で歩かせてみたいですね」と言っていただいて「共感してくれた、嬉しい」と思います。

 


あともう1つは、最近SDGsという持続可能な開発目標というものがありますが、この中には自然環境に関わるものがいくつか入っています。そのために今から準備をするのが、ロボットデザイナーの役割かなと思います。ですので、遠い未来のために準備や行動をし始めているというのはモチベーションになっていて楽しいです。

 

逆に大変だなと思うときはありますか?


星野先生 今はまだないものを行ったり、わかってもらおうというのは結構大変です。全然わからない300年後とかのものを見せられても、いいかどうかわからないので、「本当は300年後のことをやりたいけどまずはこの辺にしようか」というさじ加減は非常に難しいです。

そういう意味では、「考古学って何の役に立つのだろう」と昔は思ってたんですけど、最近すごく面白いと思います。考古学を知ると「人ってあまり変わらないな」ということがわかります。夜は寝るし、ご飯を食べるし、「古代エジプト時代も食べログとかあったのかな」とか思うわけです。そうすると、僕たちも300年後に未来の食べログを見ている可能性があります。

人の行動変容ってそんなにないのだなと思うんです。なので「考古学をもうちょっとやっておけばよかった」と思います。僕は最近「広く浅く力」と言っているんですけど、今は調べて深掘りがしやすい時代なので、表層の入口をいっぱい知っている方が深掘りしやすい。なので専門性を高めるのも大事ですが、一旦広げてから時と場合によってさらに広げていく、そして掘っていくのがいいと思っています。

先生が学生を指導する上で大事にしていることは何でしょうか?


星野先生 僕たちのゼミは、デザインとプロトタイピングのゼミです。デザインというのは絵を描くだけではなくて物事を考えたり、整理したりという言葉も含んでいます。こうやって考察することもある種デザインですよね。 あとプロトタイピング上では、ものを作ることは重要ですが、なるべく早くなるべく簡単に進めることを大事に思っています。このロボットも最初は牛乳パックだったり、グリコのチョコレートの箱が脚だった時期もあるんです。なるべくそういうプロトタイピングとデザインを回しながらやっていこうというゼミです。なので、学生さん自身が持っているテーマはみんなバラバラで千差万別です。

よく「公私はどんどん混同していこう」と言っています。公私混同力が高くないと、モチベーションが上がらないので。これだけいろんなチャンスがある現代なので、好きなことで勝負しないと、特にこの学校はクリエイティブの学校なので、なかなか尖らないんです。なので、できるだけ好きなことをやってもらう。

ただ、その好きなことが社会に引っかかる形かどうかは学生さんからはなかなか見えにくいので、助言をします。先日もイラストレーターをめざしている学生に最近はクラウドで仕事を受けられる仕組みがあるから、まずやってみようと伝えました。どのチャレンジを社会の矛先にしていくかを一緒に考えることが多いですね。

 

成長の早い学生さんに共通して見られる特徴はありますか?


星野先生 以前一緒にお仕事をした脚本家の方が舞台のポスターを作ったのですが、めちゃくちゃかっこいいんです。グラフィックの専門家では無いのに文字の使い方や配置がやけにかっこいい。それは脚本家の感性やこだわりがグラフィックのクオリティを上げたのだと思います。ある種突き抜けたものを持っている方はその隣の山の高さもわかるんです。

さっき専門性は必要なときに深掘りすればいいとお話はしましたが、ずっと浅いままだと「ここが山の頂上か?」となっちゃいます。そういう時は一つの山にとにかく登って、「なるほど、このくらいか」と高さを知る。そこから広げると全部その山の頂上並に広がっていくので、おすすめです。私ですと3DCGのレベルを上げたことからロボットのデザインへ進み、その後空間や建築のデザイン、そしてブランディングなどへと自然に広がっていきました。

先生が通われていたときと現在では、デジタルハリウッドの雰囲気は変化しましたか?


星野先生 それが不思議と変わらない部分が多いです。というのは、僕はこの学校がその特徴を作っているのは“デジタルハリウッド”という名前そのものだと思っているんです。何やっているのかよくわからないじゃないですか。その不明瞭さが可能性を感じさせているんだと思います。ですので人間形成的、将来設計的に模索していたりまだ見えてない、より面白い可能性を求めている方が今も昔も多いのでしょう。

僕が通っていた頃も凄かったです。自己紹介で出てくるのが「昨日会社辞めてきました、これに賭けています」「3か月前に辞めました、これに賭けています」。凄いですよね、デジタルハリウッドという謎の文言に対する良い意味での幻想や可能性にみんな集まってきていて、学びを始めると、スキルや表現方法などの確固たる何かが渡されるんです。それをどう人生の中で成長させまとめていくかは本人たちにかかっているところも変わっていません。

※星野先生が卒業したのは、1994年にデジタルハリウッドが最初に開校した社会人向けの専門スクールになります。デジタルハリウッド大学は2005年に開学しましたが、専門スクールは現在も継続しています。

最後に科学技術に興味を持ちそうな子どもたちに一言いただきたいのですが


星野先生 小学生や中学生のみなさんが社会に出るまで約10年後と考えます。例えばiPhoneが世の中に普及し始めたのは2009年で、現在までたった12年しか経っていません、それ以前はスマートフォンそのものがありませんでした。そうすると、今から10年後にはiPhoneやスマートフォンがもう存在しない可能性すらあるのです。10年前は「Hey,Siri」と言って何かを頼むのも夢のまた夢だったんですが、 GPT-3(言語AI)と機械学習のコンビで、文章で打ち込むとプログラムが返ってくることさえできる時代になってきているので、3年後には「いいプログラムができる文章を書くよね、あの人」という時代になる可能性が十分にあります。

そのときに国語の文章力がプログラムの必須条件になるかもしれないし、英語の方がプログラムを書きやすいとなった場合には、英語での文章力が重要になってくるわけです。 だけど文章力があってもその後にはプログラムを構築する構築力が必要で、その構築をするには何をするかテーマを決めるクリエイティビティやリサーチ力が必要だったり、、、ほら、もう何が必要かわからないでしょう? いま必須と言われているスキルや考え方が10年後にその形で存在しているとは全然思えないんです。

だから僕が言えるのは、好きなことから始めて隣の山をどんどん進めていけばいずれ何でもできるようになるので、好奇心の向くままに手当たり次第やることをおすすめします

テクテク編集部あとがき

取材の途中で、先生が作られた未来職業カードを説明いただきました。いまある職業の束からカードを1枚、そして先端技術の束からカードを1枚引いて、未来にどんな職業があるのか想像してみるゲームです。 たとえば、職業カードが“調査員”で先端技術カードが“AI&ドローン”だとすると、ドローン調査員。計測行動はドローンに任せて、統計の作業をAIが行う、という調査行為自体が人の手を介さずに完全に自動化されるという未来が想像できます。ぼんやりとした未来がくっきりと具体的に見えてくるので、いかにもデジタルハリウッドらしい知識とイマジネーションが試される面白いゲームでした。 テクテクは未来職業カードを使ったイベントをぜひとも展開したいと考えています。星野先生と一緒に機会を作ってまいりますので、ぜひともご注目ください。

 

 

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