「一言一句のテキストよりも視覚的な記憶のほうが、 自分とは何かを考え整理することができる」オリアル 佐藤さん
2021.07.13

株式会社道々楽者 代表取締役 佐藤太志朗さん

 

概要

オリアルは生徒一人ひとりが自由自在に卒業アルバムが作れるサービスです。生徒は端末からログインして、学校行事や先生方が撮影した共通写真と、自分の画像データをフォルダーで管理し、好みのテンプレートを選んで、写真とテキストを配置していきます。拡大縮小微調整も思いのままで、レイアウト作業が苦手な生徒は自動配置機能も利用できます。先生方も生徒たちの進捗確認ができて、GIGAスクール構想の枠組みの中でもしっかり導入できる仕組みです。全員共通内容という条件が通常の卒業アルバムのコスト維持の前提なので、他の卒業アルバムがオリジナル要素を付け加えられたとしても、表紙や特定の1ページのみなど一部分だとのこと。一人ひとり中身が違うアルバムを生徒に手渡せる仕組みはとても少ないのが現状のようです。そこでオリアルの生みの親である道々楽者の代表取締役 佐藤太志朗さんにお話をお聞きしました。なぜこのような仕組みをスタートしたのか、そこには学校と密着し、学校の様子を撮影し続けてきた写真スタジオとしての生徒たちに向けた思いがありました。



なぜオリアルのサービスをスタートしたのか、理由をお聞かせください


佐藤さん: 既存の卒業アルバムのイメージをしていただくと、当然全員が同じ内容の卒業アルバムを受け取るものだと思うんです。これに対して、共通のページは持ちながらも、一人ひとり写真を選んでレイアウトし、最終的に一人ひとり違う卒業アルバムが受け取れるというのがオリアルのサービスの特徴です。 アルバムを貰って「こんなことあったね」「写ってるじゃん」というのも振り返りにはなるんですけれども、卒業という節目に「学校にいた自分って、何だったんだろう」と主体的に振り返り、自己理解に繋げることをどうやったら達成できるか考えたら、自分で写真を選んだり、編集できる方が絶対にいいと考えたのが始まりです。

出典:オリアル

 

サービス自体をスタートしたのはいつからですか?


佐藤さん: 去年トライアルとして実証実験的に無料で使える期間を設けていました。ある学校からは無料トライアルを越えて、印刷成果物を生徒たちの手元に残したいから、その分は払うという案件がありました。会社としては今年度ついに正式リリースして、みなさんどうぞ使ってください、買ってくださいという状態ですね。

自由にアルバムが作れるのは面白いサービスですが、「いったい何を作ったらいいのか」と戸惑う生徒もいるかと思います。


佐藤さん: オリアルのコンセプトは自由に作れる以上に、「振り返りをする。それによって自己理解を深める時間が大切」ということです。そのためにマイドキュメンタリーという授業案を作って、今年からリリースをしています。学校の指導要領の改訂に対応して、キャリア教育や自己肯定感、コミュニケーション学習、自己の振り返りの授業に利用できるものです。総合の時間や特別活動のアイディアに困っている先生、ICT環境を入れたはいいけれど何をやったらいいのか悩んでいる先生にもお奨めできます。進路相談の前に今の自分を知った方がいいよねという切り口もありますね。


出典:オリアル

 

マイドキュメンタリーについて、もう少し詳しくお聞かせください。


佐藤さん: フルバージョンで8時間。ざっくり言うと、今の自分と過去の経験のエピソードをまとめて振り返りをしたうえで、明日からの挑戦と将来のイメージを設定して表現します。そして、表現している人をどう受け止めて、承認するかを体験するプログラムになっています。最終的にはテキストベースではなく、写真を使用して視覚ベースでまとめるものです。

新たな環境などで自己紹介や自分の話をする時には一言一句テキストでまとめた経験よりも、3年間こんなことがあったと整理をした経験と、それが視覚的に記憶に入っている方が言葉を出しやすいんです。文章でまとめた言葉を思い出すよりも、「こんなシーンがあった」「こんな友達と繋がっていた」という視覚情報の記憶の方が澱まずに言葉が出てくると言われています。具体的には、付箋やワークシートを使って、グループワーク、ペアシェアリングなどで掘り下げながら、オリアルを使ってまとめてゆきます。

卒業後には、生徒たちは新しい環境や出会いに必ず身を置くわけですよね。このプログラムを使えば、それが苦手な子も得意な子も、自己紹介のハードルが1段下がっていきます。苦手な子ならここで練習ができて、「みんな受け止めてくれる」とか「こういうことを言っても大丈夫」という経験が持てて、自己紹介が一歩踏み出しやすくなります。得意な子なら「より自信を持てた」「伝えたいエピソードが整理できた」とプラスにしてもらえればいいと思っています。


生徒たちの体験の内容はどうなりますか


佐藤さん: 全体としては「今の私といえば」、「3年間の鉄板エピソード」、「明日からの挑戦・未来の自分」の3つで構成されていいます。

例えば「今の私といえば」ではワークシートに沿って、自分で自分の「今の自分」を書き出し、続いてグループワークで友達にも「今の自分」を聞く事で「客観的にみた自分」も獲得した上で、改めて「今の自分の良いところ」を3つ抽出し、その「良いところ」がそれぞれ3年間のどんな経験から来ているのかを掘り下げます。 「3年間の鉄板エピソード」では、当時の行動や感情の変化を振り返りながら、自分が話すための要素を時系列で整理します。要素をつないで話の組み立てをして、タイトルをつければ、もう発表ができます。2分で話し3分でフィードバックするグループワークでは、発表者が話している間は前向きなフィードバックが返せるように聞く時の観点や姿勢などを学び、傾聴に徹しながらフィードバックのメモを取り進めます。「明日からの挑戦・未来の自分」では、それぞれ目標設定をした上で、「今の自分がその目標を立てるのは3年間のどんな経験やできごとから繋がっているのか」を掘り下げます。

記憶のトリガーという言い方をしていますが、自分が振り返った記憶に紐づく写真を入れて、キャプションを書き添えるまとめ方をしていきます。最後に今回のプログラムを通して自分や友達が成長し学べたと思えることは何かを個人でまとめ、グループで共有して、どうしてそれが得られたかを掘り下げて、この授業は完了です。

相当中身が濃いプログラムだと思いますが、反響はありましたか?


佐藤さん: 去年のトライアル期間中に公立の小学校から「4時間しか使えないけれど、マイドキュメンタリーをできないか」という申し込みがありました。小学校は45分授業なので、さらにハードルが高かったんですけれど、先生に一番児童にさせたいポイントをヒアリングしたところ、春の中学からの目標設定をやりたいということだったので、時間のかかる鉄板エピソード編を抜くなどプログラムをアレンジして提供しました。「今の自分」をわいわい楽しみながら掘り下げておいて、改めて春からの目標設定に時間をかけて、オリアル上でまとめていただきました。公立小学校6年生45名の声をまとめたものがこれです。


出典:オリアル


マイドキュメンタリーの授業の振り返りとして、児童たちが学べたと思っていることを紡ぎ出してきているので、僕が思っていたことをちゃんと汲み取ってもらえた実感があります。

他の事例ではいかがですか


佐藤さん: フルパッケージで高校2年生の仲良し6人組が体験した例があります。高校生に集まってもらって、僕が全ての授業を担当しました。コロナ期間になったので、結果zoomで行いました。おかげでみんなの表情の変化はすごく見やすかったです。

実施前、実施後で変化は感じられましたか?


佐藤さん: 大変実感があります。この子たちはもともと仲良し6人組だったのですが、逆にこの子たちはあと1年間同じ学校で過ごすので、「卒業までの1年間が変わったよね」と振り返りの中で言ってくれていたりして、こちらも見ていて本当にそうだなと思いました。仲良し6人組だけど、今までにしたことのない幼少期の話がワークの中で出たりしていましたね。 いつも気が利くキャラクターの子がいるのですが、その気が利く根拠が、実はいろんなことが不安だったり心配だったりするから身の回りに目が行くし、ゆえに行動にもなっていたという話をしてくれました。他の5人に気を遣っていたとか、恐れていたということではないけれど、過去の自分の経験からみんなに気が利くと言ってもらえる自分になったと話してくれたことに対して、他のみんなも「そうだったんだ」と改めて気がついたエピソードがありました。


出典:オリアル

 

とてもよくできているプログラムだと思いますが、プロジェクトワークやカウンセリングの仕事を写真の仕事とは別にされていたのでしょうか。


佐藤さん:  僕は特別専門講師として、都立高校の先生をやっているんです。都立の芸術の学校の映像メディア表現専攻という枠組みの中で、写真の授業を担当しています。生徒たちは3年生になると半年ぐらいかけて、自分でテーマやコンセプトも決めて、自分で制作を進めていく「卒業制作」をすることになります。 特別専門講師として12年目になりますが、この卒業制作で初めて「自分が何を作ったらいいのかわからない」「自分が何を好きかわからない」と悩む子がたくさん出てくるんです。すると結果的に、半年のうちの2か月ぐらいほぼコーチングやカウンセリングのような話になってくるわけです。制作が進む生徒たちに対してはもちろん制作時間として専門的な技術や知識を以て助言や指導をしていきますが、悩む生徒たちに対しては「私は何が作りたいんだろう」「そもそも私は何が好きなんだろう」と制作者・表現者としての「自己」を掘り下げることを延々やっています。その経験ではないでしょうか。 悩み続けている高校3年生と週3回、授業で会って、伴走しながら向き合っていくので、いろいろ書籍を読んだり、研修や講座を受けてみたりと僕自身も常に学びと実践の繰り返しです。

それは本当に深い話だと思います。ぜんぶ納得しました。


佐藤さん: もう1つ理由はあって、自社では採用の際に面接する立場ですが、仲間の経営者同士で話すと、「面接時にも採用後にも自己肯定感は大切だ」という話になります。入社したあとも自分の目標設定や自分の価値観を自分で理解できていないと、仕事で悩んだ時に周囲が手を差し伸べても肝心の本人が課題整理できずにモヤモヤとした悩みが膨れ上がてしまったり、やりがいを見出すのが難しくなってしまうんですよね。 多くの経営者は悩んでいる社員のことを「できない奴」とは思っていなくて、何とか自分のところでいろんなものを発揮して、良い人生になってほしいと本気で思っています。そのときに本人の課題として、些細で毎日変わってもいいけれど「自分とはどんな人間で、だからどうなりたい」という思いを常々持っていた方が、なぜ現状と自分とうまく紐づかないのかというところの話をしてあげられます。簡単に言うと、離職率は絶対に下がるんです。 大風呂敷を拡げる必要がある時には、僕はこのプログラムを「日本の自殺率を減らします」と紹介しています。自分の仕事の立場と経験から「こういうものがあるといいんじゃないか」という思いがあって、生み出したのがこのプログラムですね。


テクテク編集部あとがき

オリアルとマイドキュメンタリーは、いま時代が必要としているサービスです。自粛期間にクラスの友達やクラブ活動の中とのコミュニケーション機会を十分に取れず、自宅中心で生活せざるを得なかったいまの生徒たちは、遠足や運動会などの学校行事の思い出も少なく、自分と他者との関係性が希薄になっているのではないでしょうか。ここでIT学習と写真データと仲間とのディスカッションを通じて、学校生活の思い出を総括し、自分の思いを整理することは、新しいステップに進むためにも必要なことだと思います。2021年度卒業の生徒だけでなく、2020年、思い半ばに学校を卒業していったこどもたちの決算としても、オリアルとマイドキュメンタリーは役立つことでしょう。

 

 

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