「計算や漢字も大事だけど、 楽しい気持ちや自信のほうがもっと大事」ワンダーラボ川島さん
2021.07.07

ワンダーラボ株式会社 代表取締役 川島慶さん



概要

ワンダーボックスは毎月自宅まで送られるキットとアプリで構成されているSTEAM教育教材。さっそく僕のこどもが試してみたのですが、もっとも楽しんで学習した教材のひとつになりました。コンテンツ数が多いので、ずっとこどもは熱中します。そして細かい説明書きがいらないくらいコンテンツがわかりやすいので、直感的に試して、そのまま学習を進められます。今回はワンダーボックスの特徴を代表取締役の川島さんに お聞きしました。



ワンダーボックスをスタートする際に意識したことはありますか?


川島さん: われわれのミッションは子どもたちに何らかの力を身につけさせるというよりも「知的なわくわく」という、本来こどもたちが持っている力を引き出すことです。「知的なわくわく」とは、具体的には「かんじる」「かんがえる」「つくりだす」ことを楽しんでいる状態を指します。ワンダーボックスはこれらを存分に引き出すために作られた教材です。われわれはこれまで5年間、教材開発のための研究授業をほぼ毎週行っておりますが 、毎回90分の授業のために10種類ぐらいの教材を準備しています 。こどもたちに「知的なわくわく」を楽しんでもらうことを目的に、デジタルもアナログもまたいで、様々なコンテンツを生み出してきました。そして授業を通して作り上げたものを多くのこどもたちに届けるにはどうしたらいいんだろうということで、パッケージにしたのがアプリとアナログ教材を組み合わせて学ぶSTEAM教育の教材、ワンダーボックスです。

 

ワンダーボックスのような教材を開発するまでの経緯を教えてください


川島さん: 私は算数、数学が小さい頃から好きで、4年生ぐらいから教科書や学校のテストを解きながら「この問題はなぜこんな数値設定にしたんだろう」とか「設定をこう変えた方がもっと深みがある問題になるのに」ということを考えているような子でした。

私自身は中学受験を経験しましたが、中学入試の算数の問題には素晴らしく奥深い問題が多く、そうした問題に出会うと解くことも忘れてその問題の素晴らしさを味わっていました。自分の受験が終わってからも、有名校の問題は毎年チェックしていますし、今では「良問大賞」という独自の良問ランキングまで発表しています。
学生時代から、問題作成のアルバイトをしていましたし新卒で学習塾に入社した後は、ドリルなどの問題作成、算数オリンピックへの問題提供など、子どもが知的に楽しめる問題作りを得意としてきました。

これまでに4歳から大学生まで、幅広く指導してきましたがそうする中で、保護者や周りの大人の影響力の大きさに気づいて、親御さんと一緒に暮らしていない児童養護施設の学習支援に携わるようになりました。そこには、何に対しても取り組む意欲を持てない、じゃんけんという確率ゲームさえ自分は負けると思い込んでやりたがらない子どもがいたんですね。

計算や漢字ももちろん大事ですが、それ以前に大切なことは「楽しい」という気持ちや「自分はできるんだ」という自信、まずやってみよう!と思える意欲で、そうした気持ちを引き出せる教材を作るようになりました。

そこでハードルとなったのが、文字認識です。特に低学年までの子どもや、発達が遅れている子どもは文字が理解できないことがハードルとなって考える楽しさを味わえない、そこまで到達できないことが多くありました。

そこで何しろシンプルで直感的に理解できる一切文字を使わない教材を作りました。子どもたちに試してみると、一人の例外もなく、背中をゾクゾクさせながら取り組んでくれました。その様子を見て、これは世界中に届けられるコンテンツになると考え、2014年にワンダーラボ(当時の名称は花まるラボ)を設立して、コンテンツの開発を進め、「シンクシンク」という思考力を育てるアプリとしてリリースしました。このアプリは今では150ヵ国、170万人の子どもたちに使われています。シンクシンクから始まり、さらに研究授業や開発を重ね、思考力だけでなく感性や創造性も含めた「知的なわくわく」を届けよう、となり今に至ります。



わくわくというのは、達成感とはまた違うんですか?


川島さん: そうですね。「これは何なんだろう?」というのがわくわくしている情動で、「こうなのか!」とか「できた!」というのが知的躍動。その知的躍動の一部が達成感で、わくわくしている状態と知的躍動を得られた状態があって、だからまた次のわくわくが生まれる。達成感だけにフォーカスして、結果が出たから嬉しいということばかりをしていると、結果の出にくいものへの挑戦心がなくなりやすいので、バランスや刺激の程度にこだわって、教材を作っています。

教材を通して、こどもたちの興味や好奇心を育てて、自分から積極的に学べる流れにしたわけですね


川島さん: そうですね。素晴らしい学校や先生がいる環境であればいいですが、世界にはそうした環境がない場所もたくさんあります。だからこそ、「やってごらん」と教材を渡すだけで、何も教えなくてもこどもたちが勝手にのめり込む、わくわくして取り組み続けてくれるような教材を生み出したかったのです。 私たちは、教材やコンテンツの可能性を信じています。「さあやってごらん」と教材を渡すだけで、子どもたちが熱中して取り組んでくれる様子を見たら、ともすれば「これをやりなさい」「ちゃんと並びなさい」と、決められた指導計画やルールに目がいきがちになってしまう先生たちも、もっと大切なことに気がついてくれるんじゃないか。良い教材にはそういうパワーがあると思って、その思いを教材に込めています。

海外に行って、日本の子どもたちとの学び方の違いは感じましたか?


川島さん: 受験のシステムを含めて、日本は物事を言われた通りに再現することに目が向きがちで、自由に試行錯誤して発見することよりは、子どもたちが失敗しないためにレールを敷いて環境を整える傾向が強いです。「よっしゃー!」と感情を発露して学ぶのは、海外の子どもの方が圧倒的に得意ですね。学びが生活に根付いていると、そのことに対してしっかり考えたり、自然と身についていったりしますね

どちらが良い・悪いではないですが、数に対する感覚も、置かれた環境によって変わります。たとえばフィリピンの養護施設を訪れた際に、1房5本のバナナが描かれている絵を見て本数を答える問題で、適当に”Six.”と答えていた子がいました。施設ではそれなりに食料が支給されていて、とりあえずお腹いっぱいは食べられる。だからバナナが5本なのか6本なのかには、あまり頓着がない様子がありましたね。私の家は5人家族だったので、夕飯のおかずなども「5で割り切れるかどうか」にすごく敏感になります。すると、5の段の掛け算・割り算がまず得意になるなど、数に対しての感覚は生活環境やその国の文化などによって結構違いますね。

また、日本の子どもたちは、形に対しての認識が強いと感じます。たとえば、同じ「L字形」でも、正方形を3つつなげたL字と、4つつなげた片方の先が長いL字。そういう差異への敏感さは、東南アジアの子より日本の子のほうが強い。そういう違いに気づきやすい環境にいるんだなと感じたことがあります。

今後のワンダーボックスの展望をお知らせください


川島さん: 興味や関心を「深められる」ような教材をさらに増やしていきたいと考えています。教材の幅が広く、コンテンツの中で色々なものに興味を持てるように作っていますが、興味を持った先に、子ども一人ひとりの生活する環境によって出会うものなどと絡めて、子どもたち自身で興味関心やわくわくを深めていけるようなコンテンツを生み出していきたいです。


 

テクテク編集部あとがき

ワンダーボックスの川島さんは東大卒、算数オリンピックの出題者、そしてSTEAM教材の開発者。実は取材前は、典型的な理数脳をお持ちの人なのだろうと、かなりビビっていました。そして実際にお会いして、お話ぶりは確かに筋道立っていたのですが、印象的だったのは、理数系らしくなく、熱を帯びつつオノマトペを多用されていたことです。ワンダーボックスのキーワードは、わくわくであることは間違いないですが、誰よりもわくわくしていたのは川島さんであるように思えました。

 

 

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