※この記事は2021年4月にインタビューしたものです。
木村さん: embotはNTTドコモさんの新規事業創出プログラムを通じて生まれたものです。タカラトミーは、NTTドコモさんとはOHaNASというお話しロボットを作った実績があり、そのときから新しい企画を一緒にできないかと話をしていました。今から4、5年前にNTTドコモさんから、プログラミング教育の必修化にあわせて、段ボールをベースにしたプログラミング商品の開発プランを見せていただきました。 段ボールだけで見ると、茶色い味気ないものですが、お子さんたちが赤や青など、自由に色を塗ることができて、想像力で世界に1つだけの段ボールロボットが作れる。タカラトミーには完成品、成形品で色が塗られたものを売るイメージがあると思いますが、段ボールを使うことで子どもたちが自由に楽しめるものを作り出せる。子どもたちにその素材みたいなもの、原石みたいなものを渡すことができるとこの企画に興味を持って、共同事業としてembotを発売した流れがあります。
土肥さん: embotのアプリ自体はビジュアルプログラミングを使ったやさしいインターフェースです。特徴としてはフローチャートを用いている点で、フローチャートを用いることでプログラムを構造的に理解しながら直感的なプログラミングが可能になっています。プログラミングは5段階のレベルを設けて少しずつ複雑なプログラミングに挑戦できる仕組みになっているので、はじめてプログラミングに触れる子どもでもとっつきやすいと思います。 段ボールは一般的には梱包材で、玩具の素材として本格的に使用するのは今回が初めてでしたが、子どもたちが自分で造作するにはうってつけの素材です。子どもの手でも抜きやすく、組み立てやすいという点について試行錯誤を繰り返し、われわれとNTTドコモさんとで何度も工場と調整しました。
土肥さん: われわれが苦労したのは、工場でプレスするときの段ボールの厚みやしなり方でしたね。細かいところを何度も差し込むと、そこがフニャフニャになる可能性があって、そこを差し込みやすくすることに留意しました。大人の手であったり、小学3年生でも器用な子ならできますが、実際にモニターのテストで様子を見ると、何度も入れたり出したりしてフニャフニャになってしまう子もいて、何度も試行錯誤を繰り返しながら、着地ポイントを探しました。
土肥さん: 子どもたちが自分たちの創意工夫で作るものですから、耳が取れたり、垂れたりしたら、自分でまた違う段ボールで補強の工作をしたり、メンテナンスも含めて自分たちで試行錯誤する。やわになったら、もっと大きい耳を作るとか、貼るだけの部品にするのかとか、こうやったら強くなるという創意工夫を考えるのがembotの立ち位置です。経年で駄目になったからおしまいではなく、どうしたら耐久性が良くなるか。プログラミングだけではなく、クラフトの部分での工夫も、子どもたちのヒントとして持ってほしいという思いがあります。
木村さん: 5年生の算数や理科の教科書でプログラミング教育が出てくるので、5年生がメインで少し早めの場合だと4年生ぐらいからと考えていました。実際、購入者のデータもありますが、予想と同じで5年生を中心に9~11歳がメインユーザーになっています。 ただ、発売前は男の子の方がかなり多いだろうと予測していましたが、実際には男女差はそんなになく6:4ぐらいです。昨年、一昨年と夏休みの時期にembotのアイデアコンテストを行いましたが、優秀作品には女の子も選ばれています。体験会や勉強会のイベントでも、女の子の参加者も半分ぐらいいて、男女差なく楽しんでいただいています。
木村さん: 葛飾区に本社がありますので、葛飾区の教育委員会に提案したところ、採用いただき、区内の49小学校の5年生の授業の教材になりました。学校の先生方や教育委員会に認められたことも手ごたえですし、それ以外でも20以上の自治体に採用いただきました。 段ボールなので子どもたちが自由に作れて、創意工夫ができるというところが学校の教育には向いているし、創造力を伸ばせるという声を多くいただいています。 子どもたちにとって、プログラミングのコードを書くことは取っ付きにくいことですし、各教育委員会も、子どもたちがどう楽しんでプログラミング思考を学ぶかという見方で教材探しをされていて、その中でembotを採用いただいている自治体さんも多いです。
木村さん: 現在、embotのスターターキットを販売していますが、これ以外にも部品や、オットセイ、クワガタ、宝箱といったダンボールなど、拡張性が出せる商品を販売しています。第1段階としては、プログラミングでサーボモーターを使って動かす商品でしたが、われわれはおもちゃ会社で、センサーやカメラ、スピーカーなど、小型化されて低価格なおもちゃを作るノウハウをたくさん持っているので、その部品をembotでも利用するなど、プログラミングでこ子どもたちが安心して楽しめるものを企画中で、順次発表していきたいと思っています。 プログラミングの授業は、今後中学校、高校と始まって大学の入試科目にもなるので、中学生にも対応できるembotを用意したり、もっとレベルも上げていくと年齢の幅も広がりますので、それに対応できる部品を作っていきたいと思っています。
木村さん: embotを使って自由に組み立てることで、電子工作やプログラミングを取っ付きやすく体験していただきたいというのが1つの思いです。これからAIが進んでいくと、なくなる仕事と残る仕事があると言われていますが、やはりクリエイティビティはなくならないと思います。プログラミングはこれから必修になるので、「こんな発想で世の中が動いてるんだ。みんなが便利になるんだ」ということを理解してくれればいいですね。 僕らもおもちゃ会社ですけれど、子どもたちが未来や自分たちの新しい仕事に気づいて、世の中が楽しくなるきっかけができたらいいと思っています。20年後に小学校の授業でやったembotがきっかけでプログラミングに興味を持って、世界がワクワクするようなアプリやゲームを作ってくれるクリエイターが出てきたら楽しいでしょうね。遊びみたいなことが将来の自分の職業になるなど、世の中のためになるきっかけがembotやプログラミングの学びだと思ってくれればいいと思っています。
土肥さん: いまの子どもたちの生活や社会を考えると、制御されているものはとてもシンプルで、電気をつけるとか、音を鳴らすとか、モーターだとか、それぐらいです。それらを制御して家電品や生活のインフラが整っています。embotはその集結だと思います。 子どもたちがembotのコアにサーボを繋げたり、LEDをつけたりするとembotの手が動いて、音階を奏でることもできる。自分でもこんなことができるんだと気づいてもらう。そこが入口で、どんどん発展応用していくことで、大人が考えてもいないものができたりすることもあります。子どもたちはすごく吸収も速いですし。夏休みの宿題の工作の中に、embotのエンジンが使われていて、創意工夫のスタンダードになっていけば、私も嬉しいです。
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テクテク編集部あとがき
紙製の学習教材はどうしても経年劣化するものなので、embotではどのような対策を採っているのか興味がありましたが、開発担当の土肥さんの「子こどもたちの創意工夫で自由に補強する」という声にとても驚きました。タカラトミーの製品ラインナップ上のembotの立ち位置はかなり自由で、それが教育現場の先生方からの声や量販店でのセールスに反映されているのではないでしょうか。動画のラインアップも相当に整っているので、ご覧になって確かめてみてください。
エムボット公式Youtubeチャンネル