こどもたちの興味の導火線に火をつける。―こどもであってもパソコンでプログラミングを学ぶ意義は?
2021.04.16



共栄大学客員教授 有限会社かいしゃごっこ代表 海老原 武先生



 



概要
2006年に共栄大学発のベンチャー企業、有限会社かいしゃごっこをスタートし、以来、学生の起業を支援し続けてきた共栄大学国際経営学部の海老原武先生。大学で授業を行う一方、埼玉県、東京都、千葉県等でプログラミング教室を開き、ITの実践教育を行ってきました。そして2020年、共栄学園附属共栄幼稚園で幼児を対象に「キッズプログラミンロボット教室」を開講したとのことで、見学を兼ねた取材に行ってきました。

 

いつから、プログラミングの教室をされていたのですか?


海老原先生: 1997年ごろから小学生中学生高校生、それと大人向けの講習会を毎月やっていました。

当時は、教え方も教材も技術も今とは違っていたと思うのですが。


海老原先生: ところが変わらないんですよ。まず、半田付けからスタートする世界ですから。私はコンピューターを昭和50年ぐらいから始めましたが、独学ですね。アマチュア無線がきっかけです。モールス信号が覚えられなくて。なぜこういうことを人間がやらなくてはいけないのか、それならコンピューターでしょう、とスタートしました。
 
だからコンピューターは事務用品じゃない、といつも言っています。当時から、ワードとエクセル以外を教えていました。コンピューターを活用して人生楽しまなきゃということをこどもに教えています。いかにして楽しいものを見つけるか、ということを1997年からずっとこどもたちに教えまくっているんです。

そこは大事なところですね。


海老原先生: 私が中心に教えたのはhtmlやイラストです。そこは今でも変わりません。いま大きい動画のポータルサイトを作っていますが、昔からそういうことをしています。当時はhtmlで使えるjavaを書いたりしていましたけど、今でも変わらないですよ。逆に最近はhtmlを書ける人がいなくなってしまった。
 
だから、それをこどもたちに教えています。オンラインのホワイトボードにタグとか手書きで書きながら説明しています。小学生にサーバーのFTP設定も指導します。

 

塾でも教室でも、こどもたちにものを教えるとなるとシラバスが必要だと思うのですが、それはどうしているのですか?


海老原先生: 要するにですね、10人いたら10人の興味に沿って動きます。10人いたら10人別の対応をします。決められたシラバス通りの教え方しかしないスクールに嫌になったこどもたちがうちに来ています。いろいろと試行錯誤して今に至っていますが、学年が高い子ができるという世界ではないです。興味が重要なんですね。だから私はそれを興味の導火線と呼んでいます。

教室の様子
共栄幼稚園のキッズプログラミンロボット教室は、年中さん年長さん10人が参加して、休憩なしの1時間。最初の30分はキーボードとマウスを使って、タイピングの勉強。後半30分は、課題解決型学習ソフトのアルゴロジックでプログラミングを習います。こどもたちはそれぞれノートPCを前に課題を解いて、正解ならばかわいいシールがもらえる仕組み。解き終えたら、手をまっすぐ上に上げて、「ミス・ゼロ」と申告する声が教室中に響き渡ります。
なにより驚いたのはこどもたちの集中力。何かに気を取られるわけでもなく、ひたすら1時間ずっとプログラミングを楽しんでいます。海老原先生いわく「楽しんでやっているのだから、本人がイヤというまでずっと続けるのがポイント」だそうです。

 



海老原先生: タブレットを使うのは駄目だといつも言っています。タッチだけで進めていく世界は廃れていくと思うんですね。将来使っていくためには、キーボードを打たないと。幼稚園でマイクロビットを教材にしてロボット教育を行っています。こどもにはゲームづくりの勉強はさせたくないという保護者はたくさんいますモーターやセンサー動かしたいという要望が多いです。レベルが高いですよ。

先生は映像の配信もされているそうですね


海老原先生: 演出から撮影から編集から配信まで、全部やっています。それを子供たちに教えています。いま、こどもたちはアルゴロジックをやっているんですけど、みんなレベルをクリアしちゃうんですよ。なので、それぞれが練習してネットにあげることを今やっています。だからこどもたちも、すべて興味があるところでやっているんですね。

それでもプログラミングが向いていない子もいると思うのですが。


海老原先生: プログラムが向いていない子には音楽を教えています。MIDIスコアを使って、ショパンやリストの曲を打ち込むんです。ここにあるのはミニ自動演奏ピアノだけれど、ちゃんと88鍵で、コンピューターと連動して自動演奏します。みんな見入ってますね。こどもたちは大好きなんですよ。


ミディピアノの演奏シーン動画



あとは大きなプラモデルで自動運転したり、イラストレーターを使ってマスクを作ったり、昇華転写プリントしてる子もいれば、ハンダ付けしてノートPC組んでる子もいたり。コンピュータのハードウェアとソフトウェアの力がない人が指導者になると難しいですよね。資格とか教員免許はもう通用しないね。
 
まずはハンダ付けができる人で、IchigoJamを作って、センサーライトを作ってというのが小学生の養成者の入り口でしょう。コンピューターでライトをつけたりモーター動かしたり、センサーをいかに使うかというところがベースになりますから。

でも、それは男の子の世界の話で、女の子はどうなんでしょう。


海老原先生: それが、男の子より女の子の方が向いているんです部活よりもスクールのスケジュールを優先して通ってくる女の子もいます。夏休みに高校生向けのプログラミングスクールをやりますが、圧倒的に女の子多いですね。知ったかぶりやへんなプライドを持っているのは男の子のほうが多い。
 
ロボコンみたいに、センサー使って障害物を取ったり避けたりするプログラムをします。わざわざ東京から通ってくる女子高生もいて、「うちの高校でもこんなことやってくれればいいのに」とグチをこぼしていますね。




テクテク編集部あとがき

1時間のスクールが終わって、年中さんの男の子が駆け寄ってきました。満面の笑顔で「ぼくはプログラミングが大好き」としゃべるので、大人たちはもうメロメロです。幼稚園の教頭先生によれば、あまり目立たない子がスキルを発揮するそうです。海老原先生は「頭ひとつ抜けて、筋がいい」と評価していました。こどもたちの興味の導火線にどうやって火をつけるか、それが確かにプログラミング学習のポイントだと僕には思えました。

 

 

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