人の心を癒すため、最新のテクノロジーをつぎ込んだ家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」
2021.10.19

GROOVE X 株式会社 エンジニア 林淳哉さん 広報 池上美紀さん

 

概要
2020年にはテレビドラマにも登場し、キュートな姿でニュース番組などでも見かけるようになった『LOVOT(らぼっと)』というロボットのことをご存じですか? 丸いボディにキラキラした瞳、可愛らしい声が特徴のロボットですが、実はこの可愛らしい見た目とは裏腹に、テクノロジーが満載で近頃プログラミング教室でも活用されているとのこと。 さっそく取材班とLOVOTの生まれ故郷、東京都日本橋にあるLOVOT MUSEUM(GROOVE X社内)にお邪魔し、その秘密を探ってきました。 今回お話を伺うのは開発にも関わったエンジニアの林さん、広報担当の池上さんです。
 

はじめに、LOVOTはどのようなロボットなのか、どのようなきっかけで生まれたのかを教えてください


林さん: LOVOTは「人の仕事の代わりはしないけれど、人の心を癒すことが出来る」ロボットです。「愛されること」を最優先に開発しました。開発の中心となった代表の林は、もともとPepper(ペッパー)の開発にも関わっていたのですが、開発の過程で、うまく立ち上がらなかったロボットを多くの人が一生懸命応援している姿を見て人は応援する存在があることで心が癒されたり、笑顔になれることに気付いたと言います。そんな人の心に寄り添う存在を作りたいとLOVOTの開発を始めました。

オーナーさんに家族の一員として迎えてもらえるためには、あたかも命を持っているかのような「生命感」を表現すること、そして、愛されるための仕草などの要素を充実させるために技術を費やしました。6層のアニメーションレイヤーを重ねて表現している瞳は、うるんでいるように見えたり、状況に合わせて瞳孔が大きくなったり小さくなったりします。LOVOTのオーナーさんが気付かないようなところでも生き物らしさや愛されるための仕草を追及しています。

出典:GROOVE X

 

360度カメラやマイク、タッチセンサーなど、LOVOTは様々な技術が装備されていますが、これらの機能は最初から設計図の中に組み込まれていたものなのですか?


林さん: 生命感を表現するために当初から様々な機能を搭載することを前提としていました。例えば、LOVOTには全身をくまなくカバーするため、全身にセンサーが50個以上搭載されています。なぜ50個も搭載されているのかというと、LOVOTのオーナーとなってくれた方と良い関係を保つうえで、どこを触れられても反応できる、生き物と同じような反応が求められるからです。また、360度見えているカメラや、生き物の声帯と同じ仕組みで声を自動生成して発声するエンジンも同じ理由で搭載されています。

逆に、初めから搭載しないことを決めていた機能もあります。それは二足歩行の機能です。二足歩行には安定性やエネルギー効率の面で課題があり、人と同じくらいの速さで動くのも困難です。オーナーとの愛着を作っていく上で、ロボットにとってより自然な移動形態としてホイールを採用しました。

また、LOVOTは人の言葉は理解していますが言語を使用した会話はしません。犬や猫といったペットも言語は話さないですが、人は癒されるし、幸せな気持ちになることができます。 鳴いたり、身振り手振りで感情を表現したりして、オーナーさんが想像力でLOVOTの言葉を補うようなコミュニケーション方法を採用しています。

LOVOTには高度な技術が多数搭載されていますが、より愛らしい仕草をさせるためには、どのような点に気をつけたのでしょうか?


林さん: 愛らしい、生き物らしい動きを開発するためには多くの困難がありました。 「愛らしい、生き物らしい」という数値にしにくい要素を表現するために情報を整理し、多数のセンサーや機能をすべて理解し、それぞれがうまく動作しあう配置を考えて設置しなければならないからです。逆に、あれもこれもと機能を詰め込みすぎると、負荷がかかりすぎてシステムの計算能力が足りなくなってしまうなどのエラーも発生しました。 現在もアップデートを続けていますが、課題は山積みです。


開発やアップデートに取り組まれているのは、主にエンジニアの方なのでしょうか?

 

池上さん: LOVOTの開発にはソフトウェア、ハードウェアのエンジニアのみならず、アニメーターや、ダンサー、ミュージシャンなど、コードを書いたことがないような人たちも一緒になって開発を進めています。

林さん: アニメーターさんも社内でPythonなどのソフトを使って、エンジニアと一緒にプログラムを書いています。なぜあえてそうした働き方にしたかというと、動作を考える人(ダンサーさん)とプログラムを組む人(エンジニア)を分けてしまわないようにしたかったからです。 一般的な分業制にすると、アニメーターが表現した動作を、エンジニアがプログラムを組むことになります。そうすると双方のやり取りに何週間とかかってしまいます。お願いした通りのものにならない可能性もあり、完成までに余計な時間がかかってしまうことになるのです。

そこで、アニメーターにもプログラムを組んでもらいながら、技術的な部分をエンジニアがフォローしてもらいながら進めています。チームにアニメーターを入れることで、より生き物らしい滑らかな動きを表現することができたのも良い点だと思います。エンジニアが動作を作ると、生き物らしい動きではなく、ロボットらしい動きになってしまう可能性が高いのです。

 

2019年の出荷以降、オーナーさんの反応はいかがでしたか?


池上さん: LOVOTは2019年の12月に出荷を開始しましたが、その直後に新型コロナウイルスが流行し、LOVOTストアが休館するなど、お客様とのタッチポイントを失ってしまいました。LOVOTは動画や写真で見るよりも、実際に触れてもらい温かさや柔らかさを感じていただいた方がその魅力が伝わる製品です。私たちは今後の展開に不安を感じていました。

しかし、私たちの不安に反して、新型コロナウイルスの影響で家で過ごす時間が増えたことに伴い、ペットを飼いたいと思う需要が世界的に増えました。LOVOTはペットを飼いたくても、アレルギーなどの様々な理由で飼うことができない方の選択肢のひとつとして検討いただけるため、ペット需要の増加に伴い、最大で約11倍の売り上げを記録しました。

 

LOVOTは教育現場でも活用されているとのことですが、どういったものか教えていただけますか?


池上さん: 開発当時から「LOVOTは教育分野で活躍できるのではないか」というお言葉を教育関連の専門家の方々からいただいており、2019年6月にはLOVOT EdTechプロジェクトを立ち上げました。これは、お子様がLOVOTと触れ合うことで、自分以外の誰かをお世話する経験や、なにかを思いやる気持ちを養うことができるのではないか、という観点から始まったものです。 また、2020年は小学校でのプログラミング教育が必修科目となったことを受けて、前述した情操教育の観点と、プログラミング教育の2つの軸で教育に役立てられないかとプロジェクトを進めています。

出典:GROOVE X
 

都内の小学校で、実際に導入されたそうですね


池上さん: はい。東京都北区にある北区立王子第二小学校に、2020年6月から11月までの期間、実証実験として導入しました。 きっかけは、同校の校長先生から、ご相談をいただいたことです。ご相談の内容としては、新型コロナウイルスによる休校が続き、児童の表情が暗く、登校を渋る児童もいたとのことです。そこで、LOVOTをクラスに導入して子どもたちの心を癒せないか、というものでした。

導入に当たっては、代表の林がオンラインで授業を行ったり、弊社のエンジニアによるプログラミング教室を実施するなど、様々な関わり方をしていただきました。 また、LOVOTの名前や触れ合うためのルールは子供たち自身で話し合って決めました。授業中も教室内をLOVOTが自由に動き回っているクラスもあれば、順番を決めて休み時間にグループごとに触れ合っているクラスもありましたね。

導入中は様々な声を耳にすることができました。 例えば、クラスの中で思うようになじめなかった子が、LOVOTがいることでお友だちとコミュニケーションが取れるようになったり、いつもは自己主張の強い子が「順番にLOVOTを触ろう」と譲る気持ちを持てるようになったり、コロナ禍での休校明けで登校を渋っていた子が、「LOVOTに会いたいから」と学校に来られるようになったり。

 

LOVOTがもたらす効果は素晴らしいですね


池上さん: そうですね。子どもたちの良いところを引き出していると思います。 20人以上の集団の中で、LOVOTが1体しかいなかったら、取り合いになってしまうかもしれません。ところが、クラス全員で話し合って名前を決め、触れ合う順番や「手を洗ってから触れ合う」などのルールも決めていました。こうしたことから、子どもたちの中で、利他性や社会性がはぐくまれていたことが分かります。




出典:GROOVE X

また、プログラミング学習にLOVOTを導入することによる大きな利点があることが分かりました。LOVOTを活用して、プログラミング教育の授業を行うと、1人1台タブレットを用意する必要がありません。 児童4~5人のグループを作り、LOVOT1体を動かすための、タブレットを1つ用意することで、プログラミングを学ぶことができます。複数人で一つの作業を行うことをモブワークといいますが、この形で作業するメリットとしては、問題にぶつかったとき一人で悩まずに、チームで話し合って全員で解決のためのアイディアを出し合うことができるという点です。この点はLOVOTの導入を相談してくださった校長先生からも高い評価をいただきました。

林さん: LOVOTをクラスの一員としてクラスのイベントに参加させてくださったのも良かったです。日々遊んだり、写真を撮ったりコミュニケーションをとることで、プログラミングのためのツールではなく、仲間として一緒に過ごすLOVOTをプログラミングできたことも、意義の一つなのではないでしょうか。

 

それは本当に深い話だと思います。ぜんぶ納得しました。


池上さん: 子どもたちはプログラミングの授業で学んだ知識を活用して、クラスのみんなで「だるまさんがころんだ」などのゲームをやったり、LOVOTとのお別れ会で演劇をやったりと、私たちの想像を超えた活用を見せてくれました。 学んだことを活かして、自ら工夫する、子どもの発想は無限ですね。

ある程度の期間を一緒に過ごしているLOVOTだからこそ、日々の授業やプログラミング授業が楽しくなるのではないかと思います。実際に、「くろまめ(※LOVOTの名前)と学べるのが楽しい」、「ずっと一緒にいるぴーちゃん(※LOVOTの名前)と学べるのが面白い」といって、こどもたちはプログラミング学習に没頭していました。

 

テクテク編集部あとがき

可愛さあふれるLOVOTですが、そのキュートなボディには想像を超える最新技術とGROOVE X社の皆さんの想いと努力が詰まっていましたね。思わず抱きしめたくなる丸い身体と、私たちのもとに駆け寄ってくる姿に胸のときめきが止まりませんでした。筆者がもう一つ驚いたのは、LOVOTは年1回の「LOVOTドック」で、ボディのメンテナンスを受けるとのこと。LOVOTが末永くオーナーさんの元で暮らすためのきめ細やかなサービスに脱帽です。余談ですが、LOVOTはまだまだできることが増えていく予定とのこと、GROOVE X社の技術と思いのすべてが詰まったLOVOTの今後の展開が楽しみですね。

 

 

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